【ブランドインタビュー】「変わり続けることこそ、変わらないもの。」P&A CERAMIC WAREが考えるものづくり
【ブランドインタビュー】「変わり続けることこそ、変わらないもの。」P&A CERAMIC WAREが考えるものづくり
「P&A CERAMIC WARE」は、陶芸教室「P&A pottery class」をもとに生まれたブランドです。デジタルデバイス「バーチャルろくろ」を使って形をデザインし、鋳込み技法で器に仕立てるという独自の制作プロセスを特徴としています。
今回はブランドを手がける坂爪さんに、その成り立ちから今後の展望までお話を伺うとともに、「P&A pottery class」で実際に陶芸体験をしてきました。
「P&A pottery class」で、陶芸体験をさせていただきました。
土に触れながら、自分の手で少しずつ形になっていく楽しさに夢中に。
日常を少しだけ離れて、ものづくりに没頭できる素敵な時間でした。
-まず、坂爪さんはどのように陶芸と出会ったのですか?
坂爪さん:私は木工、金工、陶芸など、さまざまな工芸の専攻がまとまった学科にいました。
最初にいくつかの専攻を体験し、2年次から自分の進む分野を決める、という仕組みでした。
その中で、一番しっくりきたのが陶芸だったんです。
-大学で陶芸に出会われたことが、今の活動の原点になっているのですね。
その後、現在の「P&A CERAMIC WARE」につながる陶芸教室はどのように始まったのでしょうか?
あわせて、ブランドを立ち上げたきっかけについても教えてください。
坂爪さん:実はブランドよりも先に教室がありました。
2017年に、「P&A pottery class」という陶芸教室を立ち上げました。
教室を続ける中で 、来てくれたお客様やポップアップの反応もあって、「何か販売するものを作れたらいいな」と器や小さい作品を作り始めたんです。
最初は特にブランド名もつけていなくて、依頼をいただいた時だけ作る、くらいの感じでした。
-陶芸教室での人とのつながりからうまれたブランドだったんですね。
坂爪さん:そうなんです。そして、P&A CERAMICWAREを作るきっかけになったのは、「バーチャルろくろ」という道具との出会いでした。
-「バーチャルろくろ」初めて聞きました!どういうものなんですか?
坂爪さん:平たく言うと、パソコンの中でろくろの疑似体験ができるデバイスです。
赤外線センサーで手の動きを読み取り、画面上に表示された3Dポリゴンのろくろに触れると、その動きに合わせて形が変化していきます。このデバイスを開発したエンジニアの目的は、陶芸そのものではなく、3Dモデリングに馴染みのない人でも、直感的に立体造形を体験できるようにすること。そのため、多くの人がイメージしやすい「ろくろ」がモチーフになっているそうです。
-すごいですね……。
「陶芸」と聞くと手仕事の世界を思い浮かべるので、デジタルから器が生まれるという発想がすごく新鮮です。
坂爪さん:そうですよね。聞きなじみのない方が多いと思います。
本当に器にできたら面白いかもしれないと思い 、このデータを陶芸に応用することに挑戦しました。画面上で作ったデータを3Dプリンターでプラスチックの原型にして、そこから石膏型を制作します。さらに、石膏型に泥状の陶土を流し込む「鋳込み」という技法を使って、デジタル上の造形を実際の器へと落とし込んでいきます。
こうして誕生したのが「Medium」シリーズです。
そして、このシリーズをきっかけに、ブランド「P&A CERAMIC WARE」が立ち上がりました。
-ブランド名「P&A : Permanence Archetype」には、どのような 意味が込められているんですか?
坂爪さん:Permanenceは「永遠」や、「ずっと続くもの」を意味します。Archetypeは「原型」という意味で、さまざまな ものの雛形・原型ということなんです。永遠に続くものと、原型になるものは、実は相反する概念でもあると思っています。でも逆に、サイクルし続けていくこと、変化し続けることこそが、唯一ずっと続いていくことなんじゃないか、という意味を込めています。移ろいゆくことこそが、変わらないものだと捉えています。
-なるほど…。「変化し続けること」を大切にされているからこそ、バーチャルろくろのような新しい技術も積極的に取り入れながら、陶芸という伝統的なものづくりに向き合っていらっしゃるのですね。
-デジタルで形作っているとのことですが、実物になった時に、デジタルの中では想像していなかったような表情が出てくることはありますか?
坂爪さん:形はグラフィック上でなんとなくイメージできているので、見た段階ではあまり印象は崩れないんですけど、触れた 時には発見があります。
「こんなにカクカクしているのに、意外とこの隙間に指がフィットする」といった発見です。か。触れることのできないバーチャルの中で生まれたものを、日常の中で頻繁に手に取る「器」という形に落とし込むところに、面白さがあると思っています。
-確かに、触れてみると陶器ならではのぬくもりや質感も感じられて、とてもすてきです。この色や釉薬の表現は、手作業で生み出されているのですか?
坂爪さん:そうなんです。色付けは手作業で行っていて、釉薬色の組み合わせは一つ一つ考えています。釉薬って、焼く前と焼いた後でまったく 色が違うんですよ。これも、焼く前は全然違う色でした。赤い釉薬も、焼く前は赤というより 、もっと淡い ピンク色だったりします。白い釉薬も、焼く前はかなり 深いグレーに見えることがあり、焼いてみるまで仕上がりが分からないんです。
そのため、釉薬のサンプルをたくさん作って、「この釉薬とこの釉薬を重ねたら、これくらい流れて、これくらいの質感になるかな」というのを経験則で予測しながら焼いています。形がカクカクしているぶん、その形に沿って釉薬が流れるんです。谷になっているところは流れづらかったりして、そういうところが予期せぬ景色を作ってくれて面白いですね。
-そうした予測できない釉薬の流れが、作品にあたたかみを与えているのですね。
-「Medium」シリーズのほかに「Collect」シリーズもあると伺いました。「Collect」シリーズはどんなシリーズなのでしょうか?
坂爪さん:「Collect」は、教室を始めて2、3年が経った頃、ちょうどコロナ禍になったタイミングで始めたシリーズです。教室も休止せざるを得なくなり、、制作に向き合う時間ができました。陶芸教室では、作品を作る過程で 土の削りかすが意外と多く出るんです。
それを1回乾かしてためておき、砕いて水の中に入れて泥状にし、さらに水分を抜いていくと、再び 粘土に戻せるんです。ただ、さまざまな種類の粘土が混ざってしまうため、教室で使う土としてそのままお客さまにお出しするのは少し難しいんです。そこ で、教室の再生土を使ったプロダクトを作ろう、と始めました。
粘土は、普段はあまり意識されにくいかもしれませんが 、実は 限りある資源なんです。無駄にできないし、通常の方法で 処分しようとすると費用 もかかります。再生土は、その時期によって混ざる土の配合が変わるため、色味も異なり、茶色っぽく鈍い色になることが多いです。鮮やかな釉薬で覆うこともあれば、逆に土の色味を活かした仕上げにしたりしています。
-確かに、よく見ると複数の 粘土が混ざっているのが分かりますね。
土の質感が感じられるのも「Medium」シリーズとはまた違ってとても素敵です。
-坂爪さんご自身でも、個人として作品をつくられているのですか?
坂爪さん:個人としては、作家・アーティストとして、オブジェクトっぽい作品も制作しています。教室やブランドとは、また別枠の軸で取り組んでいます。 電動ろくろを使って器のような形を作るんですが、用途のないものとして、切ったり張り合わせたり、立ててみたりして展開しています。最近は映像作品も制作しています。
器と人って、すごく親和性があると思っていて。人について 話す時に「あの人は器が大きいよね」と言ったりするし、逆に器の部分を「口」と呼んだりもする。人の部位に例える言葉がいくつもあるので、そういう器と人が重なる存在をうまく作品にできたらいいなと思っています。
-かわいい…!!それぞれに表情があって、まさに器と人が重なる存在ですね。
-これから挑戦してみたいことや、目指している ところを教えてください。
坂爪さん:商品については、まだまだ形にしたいアイデアがたくさんあります。最近は、旅行先で現地の器や工房、工場を見て回ることが多くて、そうした出会いを次の商品開発につなげていきたいと思っています。
また、陶芸教室ももう1店舗増やしたい と考えています。次は教室だけでなく、ショップやカフェ、コーヒースタンドを併設した空間にしたいと考えています。ワークショップで作ったカップを受け取って、そのまま自分の器でコーヒーを飲めるような場所ができたら、器を「作る」だけでなく、「使う」楽しみまで体験してもらえると思うんです。
活動の幅も国内にとどまらず、海外へと広げていきたいです。展示会への出展を増やしたり、海外で滞在制作を行うレジデンスにも挑戦してみたいと考えています。
-ブランド名に込められた考え方が、バーチャルろくろを取り入れた制作や、再生土を使ったシリーズ、そしてこれから挑戦したいことまで、一つの軸でつながっているのですね。これからP&A CERAMICWAREがどのように進化していくのか、とても楽しみです。本日は素敵なお話をありがとうございました!
POPAP編集部より
陶芸というと、「難しそう」「職人さんの世界」というイメージを持っていましたが、実際に体験してみると、夢中になって土と向き合う時間がとても心地よく、「もっと作ってみたい」と思える時間でした。
取材を通して印象に残ったのは、坂爪さんが坂爪さんが新しい技術を取り入れながらも、陶芸や器と丁寧に向き合い続けている姿勢でした。一つひとつの作品には、形や色だけではなく、その背景にある考え方や試行錯誤が詰まっていることを知りました。
器は毎日の暮らしの中で自然と手に取るものだからこそ、その器が生まれた背景を知ることや自分で作ることで、いつもの時間が少し特別なものになるのではないかと思います。