【Creative Camp】グローバルの視点から見るポップアップローカルから世界へ――ポップアップが越境する時代
【Creative Camp】ローカルから世界へ――ポップアップが越境する時代
近年、ポップアップは単なる一過性の販売手法にとどまらず、グローバルブランドやアーティストが文化を越えてつながる「体験のハブ」へと進化を遂げてきました。たとえば、ラグジュアリーブランドの世界各国巡回型のポップアップや、アジアカルチャーをテーマにしたイベントが欧米で行列をつくったりと、国境を越えた展開はもはや特別なものではなくなりました。
背景には、ここまでの記事でもお伝えしてきたようなSNSや動画メディアの拡散力、そしてZ世代を中心とした「体験重視」の消費傾向があると言えます。また2020年代に入ってからは、欧米だけでなくアジア各国でも海外ブランドのポップアップ需要が増加しています。
こうした流れの中で、ポップアップは単なる「限定ショップ」から、「文化と市場の接点」として再定義されていると言えるでしょう。
世界のポップアップトレンド
各国で開催されるポップアップには、その地域特有の文化やトレンドが反映されています。例えば、ヨーロッパだと、ラグジュアリーブランドが手掛けるアートやファッションに特化したポップアップが多く、アメリカではストリートブランドや体験型のポップアップが人気だったり。アジア圏ではコスメやエンターテインメントとのコラボが活発だったりしますよね。これらは消費者の嗜好や価値観の違いによるものだと言えます。
ヨーロッパでは、芸術やクラフトマンシップが重視され、ラグジュアリーブランドとアートが融合したポップアップが多く見られます。ルイ・ヴィトンやディオールは、美術館のような展示要素を取り入れ、ブランドストーリーや体験を提供する戦略を取っています。アメリカでは競争が激しく、限定性や没入体験が重視される傾向にあります。ストリートカルチャーが根付いており、SupremeやNikeなどが限定アイテムや直接的なファンとの交流を軸にした体験型ポップアップを展開しています。アジアでは、美容やエンタメがトレンドの中心となり、韓国コスメやK-POP、日本のアニメ・ゲームとの連携が人気です。新興市場として成長が著しく、インフルエンサーを活用したSNS拡散型の戦略が多く見られます。地域によって特色が反映されるので各国のポップアップに注目してみると新たな気づきが得られるでしょう。
グローバルブランドのポップアップ戦略
世界的なブランドは、ポップアップを活用して市場ごとのローカライズ戦略を展開しています。日本で行われたグローバルブランドのポップアップを例に見てみましょう。
今回ご紹介するロエベ×スタジオジブリ『ハウルの動く城』コラボレーションPOPUP は日本のカルチャーを活かしたユニークなポップアップの一つです。
ロエベ×スタジオジブリがおくるコラボレーションは、感情を揺さぶる名作『ハウルの動く城』。ポップアップを通じて、映画の世界観をリアルに身に纏う体験を提供しました。主人公のソフィーやハウル、炎の悪魔カルシファーやマルクル、荒地の魔女など、おなじみのキャラクターたちがロエベの創造的なアプローチによって、バッグやウェア、レザー小物に生き生きと蘇ります。
紹介記事:ロエベがスタジオジブリ 『ハウルの動く城』とのコラボレーションによるカプセルコレクションのPOPUPを2月2日から開催
手描きとデジタルのアニメーションが融合する『ハウルの動く城』は、技術的な革新です。古いものと新しいものをつなぐクラフトの力の好例であり、ロエベが誇りをもってジブリと共有する創造的なアプローチとなっています。
”今回のコレクションでは、それを大胆に推し進め、映画の世界を文字通り現実に蘇らせました。各アイテムには愛すべきキャラクターや美しい背景が宿り、身につければまるで映画の世界に入り込んで、作品世界の一部になったような感覚をもたらしてくれます。言うなれば、手仕事によって生み出された、身にまとうことができるバーチャルリアリティです。”
また、もうひとつの事例として、クリスチャン・ディオール「夢のクチュリエ」展をご紹介します。
紹介記事:【DIOR】「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展を東京都現代美術館(MOT)にて12/21(水)より開催
”パリ装飾芸術美術館での成功に続き、ロンドン、ニューヨークと世界を巡回してきた「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展が、2022年12月21日から東京都現代美術館で開催されます。本展はディオールと日本との真摯かつ貴重な絆を称える特別な展覧会となります。”
このように、ポップアップが単なる販売イベントではなく、新規ターゲットへの認知拡大や、ブランドの歴史や文化を伝えるためにも効果的であることがわかりますね!
日本で開催された国際的なポップアップ事例
他にも、海外ブランドが日本市場へ進出する際、ポップアップは試験的な展開の場として活用されています。
例えば、「DesignInspire In Motion 2023 Tokyo Exhibition」は、香港のアーティスト17名が参加し、日本の表参道で開催されたアートイベントです。日本市場でのアートシーンに新たな影響を与えました。
アート、カルチャー、ファッションデザインの分野で個性豊かなクリエイターとアーティストの作品を展示。展示構成が3つのカテゴリに分かれ、各章に参加アーティストが紹介されています。本展示のキーワードは「香港ヘリテージ」。1997年までイギリス領だった香港。香港の都市文化は東洋と西洋の文化が絶妙に融合し、インターナショナルでモダンな雰囲気を醸し出しています。今回はその文化を「遺産・伝統=ヘリテージ」と捉え、アート作品を通じて継承していく試みです。
1.香港の街並み
香港はフォトジェニックな観光地である以上に、その都市景観と体験がクリエイティブな表現のインスピレーションとなっています。このテーマのデザインは香港の都市や街並みにどのようにインスパイアされ、また呼応しているかという観点で選ばれた6名のアーティストで編成されています。
2.産業の再形成
かつて工業都市であった香港。アーティストたちは執筆、コミュニティ形成、プロセスの再構築を通して、産業形成における自分たちの役割を再考しています。このテーマでは、香港の産業の過去、現在、未来を浮き彫りにした作品の数々が展示されていました。
3.伝統と未来の工芸
道具と素材が交錯する工芸品は、デザインの細部にまで見出すことができ、また、モノの外観や質感を具現化する上でも重要な役割を担っています。過去から受け継がれてきた伝統工芸からインスピレーションを受け、新たな解釈と表現でデザインを生み出した6名のアーティストたちの新しい伝統工芸作品が並びました。漢字やネオン看板といった香港文化は、日本や東京にもなじみが深いもの。また、展示のみならずワークショップ体験ができたり、各アート作品の制作プロセスを紹介するコーナーもあるため、ふらっとおとづれた人でも楽しむことができるポップアップだと言えます。
最後に、 韓国コスメ15ブランドが渋谷に集結するポップアップをご紹介します。このポップアップでは、日本の消費者に最新トレンドを体験する機会を提供しました。
”海外の魅力的なブランドやメーカーの日本進出をサポートしてきたSetoworksが主催するイベント「b•ring(ブリング)」今回は日本でも話題の「韓国コスメ」にスポットを当てて15ブランドが集結。”
最大の魅力は「体験」
オンラインサイトから購入できるとはいっても、実際に気になったコスメがどんな色味なのかわからなければ購入しづらいですよね。そこでなんと「b・ring」では、その製品をトライアルできる「体験ゾーン」が用意されています。
紹介記事:韓国コスメ15ブランドを体験できる!渋谷に「b•ring」が期間限定出展
最近はオンラインサイトから購入できるようになり、海外のブランドの商品を購入する機会が増えましたよね。しかし、気になったコスメがどんな色味なのかわからなければ購入しづらいのはネックなポイント。そこで「b・ring」では、その製品をトライアルできる「体験ゾーン」が用意されていました。実際に手にとって試してみることでイメージが膨らみ、生活者の購買意欲を高めることができます。会場では、友達やカップル・ファミリーで来店し一緒に楽しむ様子もあったよう。体験から深まる交流や、商品への愛着が沸くきっかけにもなりそうですね!
異文化を肌で感じる、越境型ポップアップの魅力
ここまでご紹介したグローバルなポップアップでは、遠く離れた憧れのブランドと直に触れ合える喜びや、その国でしか味わえない「本物」の空気感が味わえます。そして、日常ではなかなか出会えない異なる美意識や価値観に触れることで、私たちの中の文化的好奇心や感性が刺激されていきます。グローバルなポップアップには、そうした「新しい自分に出会う体験」が詰まっていると言えるでしょう。世界とのつながりが感じられる場に、ポップアップならではの希少性や限定性が掛け合わさることで、単なる買い物や展示を超えた強いインパクトが生まれ、その場に身を置くこと自体が、特別な時間になること間違いなし。これからのポップアップは、単なる販売の手段ではなく、「文化と人の交差点」としても、ますます重要な役割を果たしていくでしょう。
POPAPでは、ポップアップに関するご相談を承っています。
お問い合わせはこちらから