【ブランドインタビュー】amuca®|漁網からはじまる、素材という形の新しい航海

【ブランドインタビュー】amuca®|漁網からはじまる、素材という形の新しい航海

今回POPAP編集部は、「廃漁網アップサイクルベンチャー」amu株式会社へインタビューを行いました。「いらないものはない世界をつくる。」 というビジョンのもと、漁網を新たな素材amuca®へ生まれ変わらせる軌跡に迫ります。

気仙沼での出会いから始まった、物語

すべては気仙沼の小さな飲み屋から。

amu株式会社代表の加藤さんがそこで出会ったのは、遠洋マグロ延縄漁法を営む一人の漁師さん。
彼が語ってくれた「マグロを追いかけて世界を巡った航海」の話に、心を揺さぶられたという。

今は捨てられてしまっている漁網も、実はゴミではなく資源としての価値があるのではないか—そんな発想が芽生えた瞬間でもありました。

神奈川県・小田原市出身。ボランティアで気仙沼を訪れたことをきっかけに、何度もこの町に足を運び、やがて移住。気仙沼で出会った仲間とともに立ち上げたのがamu株式会社です。

最初に思いついたのは「漁網からスニーカーを作る」というアイデア。
ちょうどその頃、漁網リサイクルが初めて成功したという情報を知り、漁具のあらゆるリサイクル方法ついて調べ始めました。
片っ端から連絡を重ねるなかで、数珠つなぎのように出会いが広がり、漁網を資源へと生まれ変わらせる挑戦が本格的に動き出しました。

漁網が持つ“資源”としての顔

一般的に、漁網は役目を終えれば産業廃棄物として処理され、多くが焼却や埋め立てに回されてきました。
しかし、漁網は丈夫で軽く、過酷な海で使い込まれても耐えられるよう設計された、いわば「機能美を持つ素材」です。

「漁網はゴミではなくて、資源なのではないか。」
そんな視点から挑戦は始まりました。

まずは漁業具を集めるところから。
気仙沼を拠点に、足を運んだ漁港は100港以上。漁師さんから直接引き受けた廃漁具を、一つひとつ丁寧に回収しています。

せっせと集めた漁網は15トン。
けれど、どうやってトラックに積むかで途方に暮れたこともありました。
真冬の朝5時、極寒の中で仕分けを繰り返しながら「本当にできるのか」と心が折れそうになった日もあったといいます。

それでも諦めなかったのは、「ごみ」と呼ばれる漁網の中に確かな価値を見ていたから。
やがて仲間が増え、協力してくれる漁師さんや地域の人々が現れ、道は少しずつ拓けていきました。
「環境に良いものだから」ではなく、「質として魅力的だから」。
その価値観を胸に、漁網から生まれたアイテムは世に送り出されています。

そして、地域ごとに違う漁法や文化も、漁具のストーリーごと受け止めて未来へつなぐ。
その先に、国内・海外と、より多くの漁具を生まれ変わらせるための仕組みを整えていく構想があります。

捨てるはずの命を輝かせる、アップサイクル

港で集めた漁網は、そのままでは使えません。
汚れや劣化があるため、“廃棄物”とされてきました。
amuca®は、それを化学的に分解し、原料にまで戻すことで石油由来の新しい素材と同等の品質に生まれ変わらせています。
息を吹き返した素材は、サングラスのフレームやアパレル生地、タイルへと形を変えていきます。海を旅した網が、新しい命を得て、誰かの日常を支えるプロダクトになるのです。

「環境に優しいから」ではなく、「質として魅力的だから」。

その価値観を大切にしながら、漁網から生まれたアイテムが当たり前になる世界を目指しています。
アップサイクルは単なる再利用ではなく、捨てられるはずだった命をもう一度輝かせるための方法なのです。

ブランド名に込めた「編む」想い

ブランド名の中心にあるのは「amu=編む」という言葉です。
これは、「地域の新しい1ページを編み、物語を紡いでいく」という想いを表しています。

気仙沼で出会った漁師さんや町の人々。そこにある営みや文化を“編纂”するように、プロダクトを通じて次の世代へつないでいく——それがamuの原点であり、amucaの物語です。

そして「ca」は、漁網を化学的に分解し、原料の「カプロラクタム」に戻すプロセスが由来となっています。
つまり、編み直し=amu循環=ca。その両方を体現する名前が「amuca」なのです。

今回クラウドファンディング限定で展開している、Buddy Collectionアイテムのテキスタイルにも、その姿勢が反映されています。

左が「DEFUNEOKURI」、右が「MURONEOROSHI」

左が「DEFUNEOKURI」、右が「MURONEOROSHI」

最初に生まれたのは『DEFUNEOKURI』。
これは「出船おくり」という気仙沼の伝統行事から着想を得ています。乗組員の家族や友人が、色鮮やかなテープと福来旗(大漁旗)で船を見送る、温かく賑やかな光景。
そのエネルギーを布に落とし込み、このコレクションが日々の挑戦を見守る存在でありたい、という想いを込めました。

続く『MURONEOROSHI』は、気仙沼名産のフカヒレ作りに欠かせない「室根おろし」という風を映したもの。
冬の室根山から吹き下ろす鋭く冷たい風が、天日干しのフカヒレを乾燥させ、ぶつかり合うときに響く“カランカラン”という音が完成の合図になると言われています。
過酷な自然を味方に変える力強さを伝えたい——その想いをデザインに託しました。

さらに、amucaのプロダクトには 「amuca®タグ」 が付いています。
タグに記載されたQRコードを読み取ると、そのアイテムに使われた廃漁具の集積地域、提供者、回収量などの情報を確認することができます。全国の漁港を巡り、自ら漁具を回収しているamu株式会社だからこそ実現できる、素材の品質と透明性を保証する仕組みです。

「かわいいから手に取った。でも、その先には“紡がれた”地域の物語がある。」
amucaが目指すのは、そんな偶然の発見と、文化への入り口になることです。

Buddy Collection—クラウドファンディングから始まる新しい航海

こうして誕生したのが、amuca初のコレクション 「Buddy Collection」
「現代社会の荒波を乗り越え生きるあなたの相棒になりたい」そして「このプロダクトがやがて地域を救う相棒になってほしい」という願いを込めて、『Buddy Collection』と名付けられています。
テキスタイルには、気仙沼の文化や漁師町の営みが息づいている。

公開されたクラウドファンディングには、200件近い応援コメントが寄せられました。
「地元を知ってもらえて嬉しい」「この挑戦を応援したい」—そんな声が、amucaの背中を押しています。

そして、このBuddy Collectionが手に入るのは、クラウドファンディングだけ。
一番最初に手を伸ばしてくれた仲間と共に、この物語を進めていきたい。
その想いから、特別に限定展開しています。

手に取ったときに感じてほしいのは、単なる“環境に配慮した素材で作られたアイテム”ではなく、そこに宿る物語。
素材となる漁具が旅してきた海や、その土地で暮らす人々の文化。
Buddy Collectionは、使う人の日々の挑戦を見守りながら、ともに歩む“バディ”でありたいと願っています。

クラウドファンディングは9月29日(月)22:00終了。ぜひこの機会を逃さずにBuddy Collectionをゲットしてみてはいかがでしょうか。

クラウドファンディングはこちら

◾️Buddy Collection一覧

【POPAP編集部より】

お話の中で、「素材の背景やストーリーを知ってもらうことを大切にしたい」と繰り返し仰っていたことが強く印象に残っています。
大量生産大量消費の時代の中で、自分の手に取ったものがどのように生まれたのかを知ることは中々ない体験で、これから自分の手に届くアイテムのタグを読み込むのがとても待ち遠しいです。
amu株式会社には海が好きなメンバーが自然と集まっているとのことで、今後気仙沼だけでなく、日本全国、ひいては世界へ進出しながら、新しい挑戦をされていくことを期待しています。