【ブランドインタビュー】唯一無二の世界観はどうつくられる? HAL’S BAGEL.を形づくる「人」と「空間」
【ブランドインタビュー】唯一無二の世界観はどうつくられる? HAL’S BAGEL.を形づくる「人」と「空間」
「偏愛ベーグル研究室」をコンセプトに、自由が丘で独自の世界観をつくる「HAL’S BAGEL.」。NY・SoHoを思わせる空間やベーグルへのこだわりから、スタッフ一人ひとりの才能を生かす組織づくりまで、POPAP編集部のみおりがそのブランドの裏側に迫りました。
自由が丘に店を構える「HAL’S BAGEL.」。
「偏愛ベーグル研究室」をコンセプトに、NY・SoHoの裏路地を思わせる空間と、個性豊かなベーグルで独自の世界観をつくっています。
実は私自身、HAL’S BAGEL.でアルバイトをしています。
働く中で感じていたのは、ベーグルや空間の魅力だけではありません。店頭で楽しそうに商品を選ぶお客さんと、生き生きと働くスタッフ。その両方が自然に共存していることも、この店の魅力だと感じていました。
この“いい空気”は、どうやって生まれているのだろう。
HAL’S BAGEL.の商品開発の責任者であるみずきさん、運営会社 役員のだいきさんに、ブランドの始まりから空間へのこだわり、組織づくり、そしてこれからについて聞きました。
◾️「偏愛ベーグル研究室」が生まれるまで
──まず、HAL’S BAGEL.の立ち上げストーリーを教えてください。
みずきさん: もともとは海外の文化を取り入れたいと思ってオーストラリアに留学して、帰国後にはいろいろなお店でベーグルの修業をしたの。
HAL’S BAGEL.がはじまる直前は、2カ月くらい毎晩のように、H.A.L cafeの営業が終わってから朝4時くらいまで試作してた。
本当に研究し尽くしたから、「偏愛ベーグル研究室」っていうコンセプトになって。
HAL’S BAGEL.は、1号店のH.A.L cafeからストーリーもつながってるの。H.A.L cafeのコンセプトが「NY SoHoに住む、女の子のアトリエ。」で。
その“女の子”に自分自身を重ねたりもしてて。その子が成長して、ベーグルが好きでたまらなくなって、自分なりの新しいベーグルをつくる。わたし目線では、そんなHAL’S BAGEL.のストーリーが詰まってる。
──ブランドにおける商品開発で一貫していることはありますか?
みずきさん: とにかく「日本にないもの」。それはすごく意識してる。
お店の世界観にマッチさせることも、「日本で見たことのないベーグル」ということもすごく大切にしてる。
◾️「美味しいのはマスト。」その先の“ワクワク”まで設計する
──「日本で見たことのない」という考えを、実際のお店ではどう表現したんですか?
みずきさん: 一番考えてるのは、「どれだけお客さんがワクワクできるか」。
ただ楽しかったで終わるんじゃなくて、「こんなベーグルあるんだ」とか、「こういう空間って素敵だな」とか、何か新しい感覚を持って帰ってほしい。
それは商品や空間だけじゃなくて、そこで働く人たちも含めて。
今って、選択肢がたくさんある一方で、「頑張りたいけど、どう頑張ったらいいかわからない」って感じる人もいると思う。
そんな中で、ここに来たらスタッフが一人ひとり生き生きと、楽しみながら頑張ってる。
その姿を見て、「自分も頑張ってみようかな」って、少しでも上向きな気持ちになってくれたら嬉しい。
──ベーグルや内装だけではなくて、そこで働く人たちも含めて、一つの体験として考えてるんですね。
みずきさん: そう。それを家に持ち帰ってから次に来るまで、どれだけ余韻として残せるかも考えてる。
◾️「足りないピースを、お互いが持っている」
──お二人は、それぞれどんな役割を担当してるんですか?
だいきさん: 僕は株式会社Liaの役員としてHAL’Sの店舗責任者をしていて、基本的には運営。採用やシフト、バックオフィス、新作のスケジュールとか、経営面について話し合いながら判断してる。
運営側の考えを現場に落とし込んで、足りないところを改善していく役割かな。
みずきさん: 私はベーグル職人。商品開発だったり、品質を維持しながらどうやってたくさん製造するかというオペレーションだったり。
あとはベーグルをいかに美しく魅せられるか、シズル感を感じてもらえるかという視点で商品配置を考えたり、食に関わるクリエイティブ。
──得意分野がかなり違いますよね。二人でやる難しさはなかったんですか?
だいきさん: そう。でも、そこがいいんだと思う。
例えば採用は自分がやって、教育はみずき。僕は採用が得意だけど教育は苦手で、みずきは逆だから。
みずきさん: そうだね。
だいきさん:あと、人にまつわることもすごく大切にしてる。人を見ることだったり、組織のコミュニケーションだったり。
それと、二人とも、「食」をすごく大切にしてる。
僕たちにとって食事って、ただ栄養を摂るためのものじゃない。
何を食べるかだけじゃなくて、その空間とか、一緒に過ごす時間とか、そこで生まれる会話も含めて楽しみたい。
そういう、「人」と「食」の部分も、僕たちの強みだと思う。
──だからHAL’S BAGEL.でも、ベーグルだけじゃなくて、空間やそこで過ごす時間、人との関わりまで大切にしてるんですね。
だいきさん: そうだね。専門を分けられてるからこそ、これだけのスピードでお店を成長させられたと思ってる。
付き合いが長いから、お互いの得意不得意は始まる前からわかってた。
みずきさん: お互いに足りないピースを、お互いが持ってるって感じだよね。
◾️「誠実な人が損をしない」組織でありたい
ここからは、今回特に聞きたかった「人」の話。
HAL’S BAGEL.で働いていると、スタッフ一人ひとりが店を自分ごととして捉え、主体的に動いていると感じる場面が多くあります。そこには、どんな考え方があるのでしょうか。
──HAL’Sの組織づくりでは、どんなことを大切にしてますか?
だいきさん: 明確に、「頑張る子たちが評価される組織にしたい」と思ってた。
気持ちとして頑張るだけじゃなくて、成果を出した人がちゃんと評価される。
僕らはすごく理不尽が嫌いなんだよね。誠実な人が損する世界もすごく嫌い。
みずきさん: あと、結果にコミットするっていうのもすごく大切にしてる。
だいきさん: だから、二軸ある。「結果軸」と「人柄軸」。
成果も誠実さも、どっちも評価されるべきだと思ってる。人ってそんなに単純じゃないから、いろんな評価軸の中でそれぞれの良さを見たい。
◾️その人が「100%花を咲かせられる場所」かどうか
──「才能を生かす」ということも大切にしていますよね。
みずきさん: そう。「才能を100%発揮できる環境」っていうのもすごく大切にしてる。
だいきさん: それが僕たちの考える「楽しく働く」にもつながってる。
自分の才能を生かして価値を提供して、人に感謝される。ここに来た子たちには、経験して、成長して、さらに楽しいと思って帰ってほしい。
みずきさん: 「適切な場所で花を咲かせる」ことが、人間にとって一番大事だと思ってる。
HAL’Sで働くのが合っている子が、ここで100%伸びられることが大切。
逆に、スピード感のある環境より、一人ひとりとじっくりコミュニケーションを取る仕事のほうが得意な子もいる。
その子が持ってる才能を生かせるか、っていうところを見てる。
どれだけお互いに好きでも、やっていることが合わないなら、「別の場所のほうが才能を生かせるんじゃない?」って考えることも愛情だと思ってる。
──その考え方って、どこから生まれたんですか?
みずきさん: 私はずっとダンスをやってて、日本一を常に目指すような環境にいたの。
同じ練習をしても、すごくなる人もいれば、そうでない人もいる。その世界を見たときに、「適切な場所で花を咲かせることが、人間にとって一番大事なんじゃないか」っていう思いが芽生えた。
だいきさん: 僕も中学生くらいから、理不尽さについてはずっと思ってた。
僕もみずきもかなり大きな挫折を経験してて、そこで潰れずにもがいて、自分たちの生き方とか、どうやって頑張っていくかを考えてきた。
そういう経験があるから、この考え方を今もブレずに持ててるのかもしれない。
◾️「適度な負荷、適度な指摘、過剰な褒め」
──スタッフのモチベーションを高めるために、意識してることってありますか?
だいきさん: 「適度な負荷と、適度な指摘と、過剰な褒め」。
過剰というより、ちゃんと言葉にするってことかな。良くないところも伝えるし、良いところも全部伝える。
人って、「見てもらえていない」と感じる時間がすごく苦しいと思ってて。
仕事を頼むことも、「あなたの能力を認めて任せてる」ってことじゃん。
だから、「ちゃんとあなたを見てるよ」っていうのは伝えたい。
自分の力を発揮してくれたら、僕たちも嬉しいから「ありがとう」ってなるし、また褒めたり感謝したりする。それがいい循環になると思ってる。
◾️「スタッフ間の空気は、お客さんに絶対バレる」
──みずきさんがスタッフと接するとき、大切にしてることはありますか?
みずきさん: 私も今の話とまったく一緒。プラスするとしたら、すごく「感謝する」ことかな。
ビジネスって、人がいてくれて初めてできることだと思ってる。HAL’Sもスタッフの子たちがいてできるから、まず「ここで働いてくれてありがとう」っていう気持ちがすごくある。
私自身、アルバイトをしてたときに「感謝されてたら、もっとやったのに」って思うことが結構あったんだよね。
だから、ちゃんと感謝を伝える。「感謝の文化」をつくりたいっていうのはすごくあった。
──そこまで人間関係を大切にするのは、どうしてですか?
みずきさん: スタッフ間の空気って、お客さんに絶対伝わると思ってる。
本質的なところから「ありがとう」が増えれば、スタッフ同士にも「ありがとう」が増える。そうすると、お客さんに対しても自然に「ありがとうございます」って言える。
そういう空間にしたかった。
だいきさん: 全部つながってるよね。
みずきさん: ベーグルにも伝わるよね。
だいきさん: そうそう。ベーグルにも、お客さんにも伝わる。
みんなに楽しんでほしい、いい雰囲気をつくりたいと思ってるなら、人間関係が原因で働きづらくなることはなるべくなくしたい。
みずきさん: 人が一番頑張れなくなるのって、人間関係だと思う。
人間関係のせいで仕事に行きづらいっていう状態を、ゼロにしたかったっていう感じかな。
話を聞きながら、私がHAL’S BAGEL.で感じていた“いい空気”の理由が少し見えた気がしました。
スタッフ同士の関係性が接客に表れ、その空気がお客さんに伝わる。そして、それもまたHAL’S BAGEL.というブランドをつくっている。
二人にとって「人」は、商品や空間とは別のものではなく、世界観をつくる大切な一部なのです。
◾️「現場がすべて」人気を一過性で終わらせないために
──HAL’S BAGEL.はオープン当初から多くのお客さんが来て、その盛り上がりも続いてましたよね。理由をどう分析してますか?
だいきさん: 明確にあるのは、ブランド力かな。
ベーグルも「絶対美味しそう」と思えるものをつくりたかったし、空間も「ここ絶対来たくない?」「写真撮りたいよね?」っていうところまで話し合いを重ねてきた。
でも結局は、来てくれた人にどれだけ価値を提供して、喜んでもらえるかだと思う。
来てくれた人が喜んでくれたら、また来たいと思うし、人にも紹介したくなる。
そこを徹底的につくり込んだから、長く愛されるお店になっていくんじゃないかなと思ってる。
それと、やっぱり組織。
お店は現場がすべてだから、働いてくれる人たちが楽しく働ける環境を、今も試行錯誤しながらつくってる。
みずきさん: アルバイトの子たちも含めて、全部を自分ごとにしてもらえるようにすることは、すごく意識してる。
◾️HAL’S BAGEL.を増やしても、“同じ店”は増やさない
──これからHAL’S BAGEL.をどう広げていきたいですか?
だいきさん: まずはHAL’S BAGEL.をもっと多くの人に届けたい。
企業からまとまった注文や催事の話をもらうことも多いんだけど、今はここでMAXまでつくっても売り切れちゃう。
だから、本場ニューヨークのベーグルをベースに、自分たちなりに日本式にこだわってつくったベーグルを、もっとたくさんの人に食べてもらいたいし、世界観も体験してほしい。
──店舗が増えても、絶対に変えたくないことは?
だいきさん: 全てかな。
店舗によって「こっちは美味しいけど、こっちは美味しくない」「こっちは接客いいけど、こっちは良くない」ってなるのは、ブランドとしてアウトだと思ってる。
みずきさん: ただ、全部同じお店にはしたくない。
同じ価値観はあるけど、それぞれに違う魅力がある。
全部の店舗を巡りたいって思ってもらえるようにしたいよね。
だいきさん: そう。ただのチェーンじゃなくて、すべてのお店にちゃんとコンセプトがあって、その店ごとの特色とか存在意義がある。
◾️「なかったもの」なのに、その街に溶け込む
──最後に、お二人が思う「HAL’S BAGEL.らしさ」って何ですか?
だいきさん: 映画のワンシーンに入り込んだような、そう錯覚できるくらいの空間。
それはHAL’Sらしさだと思う。
都会的で、今までになかった新しさがある。でも温かみも感じられる。それがHAL’Sらしさだと思う。
みずきさん: どこか昔からあったような馴染み方っていうのも、すごく大切にしてる。
ここも「自由が丘にはなかったもの」をすごく意識してつくった。
「こんなの自由が丘にはなかったよね」っていうものをつくる。でも、その街にちゃんと溶け込む。
日本にこんなベーグルはなかった。でも、自然と馴染んでいく。
そういうことをずっと大切にしてる。
SHOP INFORMATION
HAL'S BAGEL. 自由が丘店
住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘1-8-23 栗山ビル1F 栗の木通り側
アクセス:自由が丘駅南口から徒歩1分
営業時間:10:00~18:00(売り切れ次第終了)
Instagram|@halsbagel_tokyo
※営業時間・営業日は変更になる場合があります。最新情報は公式Instagramをご確認ください。
株式会社Lia
HAL’S BAGEL.、H.A.L cafeを運営する株式会社Liaの公式サイトはこちら。
◾️POPAP編集部より
今回二人に話を聞いて、HAL’S BAGEL.の世界観は、ベーグルや内装だけでつくられているものではないと気づきました。「唯一無二のものをつくる」という姿勢は、商品や空間だけでなく、そこで働く人や組織づくりにも共通しています。人、商品、空間。そのすべてに二人の価値観が通っているからこそ、HAL’S BAGEL.ならではの“いい空気”が生まれているのだと感じました。