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12月9日(土)より東京都現代美術館で豊嶋康子の美術館 における初の大規模個展「豊嶋康子  発生法──天地左右の裏表」が開催!


  • 東京都現代美術館 〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1 Koto City, Tokyo, 135-0022 Japan (map)

東京都現代美術館で12月9日(土)より【豊嶋康子  発生法──天地左右の裏表 】が開催! 

2023年12月9日(土)-2024年3月10日(日)の期間中、東京都現代美術館で、豊嶋康子の美術館 における初の大規模個展「豊嶋康子  発生法──天地左右の裏表」が開催されます。

豊嶋康子 (1967-)は、1990 年より30年以上にわたって、私たちを取り巻くさまざまな制度や価値観、約束事に対して「私」の視点から独自の仕方で対峙し続けてきた作家です。物や道具の仕組み、学校教育、経済活動から日常の様々な行為まで、私たちに避けがたく内面化、自動化されてきた思考や行為の枠組みやルールを、自身の感じる違和感や関心を梃として独自の仕方で読み替え、捉え返すことで、人の思考の型の形成、社会と自己の成り立ちの在り様を問うてきました。 

豊嶋の制作は、1990年の《エンドレス・ソロバン》や《鉛筆》など、物の使用法や構造に従い、守りつつ攻めるといった方法で別様に展開、その機能を宙吊りにする作品に始まります。90年代後半からは、「表現」の領域を広く考察し、銀行での口座の開設や株式の購入、生命保険への加入といった社会・経済活動そのものを素材として用いて、特定のシステムの全体を「私」の一点から逆照射するような《口座開設》《ミニ投資》などを発表しました。 
2005年の《色調補正1》では、一般的に共有される色の体系を「私」の設定のもと、ひたすらに塗り替えることを試みています。作品それぞれの外観は幅広いものですが、それらはいずれも、いわゆる既成の仕組みや枠組み、順列などに対して、脈絡を守りつつ「私」を用いて別の見方を挿入し、本来の意味作用を逸脱させ、歪ませ、反転や空回りをさせることで、その構造と私たちの認識や体験の「発生」を捉えようとするものだといえるでしょう。 
〈ある順番に並べる〉(2014-2016)や〈隠蔽工作〉(2012)、一連の〈パネル〉(2013-2015)、〈地動説2020〉(2020) などは、こうした構造それ自体を抽象的に展開した作品と捉えることができそうです。順序や表/ 裏、支持体と図、天と地、作ると作らない…、こうした二項自体をずらし、重ね、また反転させ続け、複数の見方が現れる作品群が生み出されています。 

《色調補正1》2005年- 作家蔵 撮影:後藤充(公開制作、府中市美術館、2005年) 

本展は、こうした豊嶋の制作の全貌を、初期作品から新作まで400点近くを一堂に集め検証する初めての試みです。
あまたある世の決まりごとに「私」を交差させる豊嶋の作品は、システムと不可分の存在であり続ける私たちに、多くの示唆を与えてくれます。「天地」や「左右」はどのようにして決まるのでしょうか?あるいは裏と表をひっくり返すことは? 自身の思考を素材とする一種の潔さとユーモアをもって、私たちをめぐる事物に対する「私」の応じ方をかたちにし、さまざまなシステムと「私」双方の「発生法」を捉えようとする豊嶋の制作は、私たちの思考や行為、そして自由の領域について、あらためて捉え返す契機を与えてくれるに違いありません。 

「美術の領域でやることは、相手の想定する領域を広げることだと思います。」
「自分の住んでいる空間を、自分の意思で組みなおす。」 

── 豊嶋康子 

豊嶋は「表現」を万人の行為と捉えていることからも、その創造が美術の専門家だけに向けられたものでないことは確実です。「考えさせる」作品であると同時に、「見る」楽しみや「作る」ことへの誘惑も感じさせる豊嶋の作品群。同時代を生きる私たちにとって、「自分事」である作品に出会えるかもしれません。 

■ 展覧会概要 

●展覧会名:豊嶋康子  発生法──天地左右の裏表 
●会期:2023年12月9日(土)~2024年3月10日(日) 
●休館日:月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日~1月1日、1月9日、2月13日 
●開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで) 
●観覧料:一般1,400円/大学生・専門学校生・65 歳以上1000円/中高生600円/ 小学生以下無料 
●会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F 
●主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 
●問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル) 

■ 本展のポイント 

♦ 30年におよぶ豊嶋の制作を、およそ400点により明らかにする、初の大規模個展。1990年、東京藝術大学在学中に西武高輪美術館で作品を展示して以降、コンセプチュアルな傾向のうちに一貫して自身を関与させる当事者性を備え、継続されている豊嶋の制作ですが、その 独自の在り方は、これまで、特に実際に制作を行う作家たちの間であつく支持されてきました。近年はグループ展への参加などを通してあらためて注目を集めており、全体像を概観する機会が強く望まれてきました。本展は、初期作品から新作まで、当館所蔵作品および個人蔵の作品も含め、およそ400点を初めて一堂に公開する待望の個展です。 

《定規》1996-1999年 作家蔵 撮影:大村雄一郎

左:《収納装置 2》作家蔵/ 右:《収納装置 尾》個人蔵 いずれも2021年 撮影:山本糾  ※参考図版

♦ 幻の?初期作品を公開 
本展では、豊嶋作品のなかでも、1990年に田村画廊、および西武高輪美術館(軽井沢)で展示され、作家としてのデビューを飾った2作品、〈マークシート〉、《エンドレス・ソロバン》を、全面修復のうえ33年ぶりに公開、オリジナルのインスタレーションを受け継ぐかたちで展示します。中でも〈マークシート〉は、豊嶋が自身の表現をつかんだ重要な作品です。(*《エンドレス・ソロバン》は、西武高輪美術館のみで公開) 

♦ 豊嶋本人の構想にもとづいた展示構成で、作家の思考を「見る」 
豊嶋の作品それぞれが持つ物理的な構造は、さまざまな事物や事象の仕組みを独自の視点で読み替え、構築したものと捉えられます。本展では、作家自身の構想にもとづき、個々の作品が持つ構造に応じて緩やかにグループ化された作品同士の関係性を見ることができます。システムを素材とする作家に相応しく、「美術館」それ自体も、捉え直され、読み替えられることでしょう。展示室全体、相照らし合う複数の作品の重なりや繋がりを探りつつ、作家の思考に触れてみてください。 

♦ 豊嶋康子をもっと知るために 

■ 会期中は、アーティストトークや対談、ボランティアや担当学芸員によるギャラリーツアーなど、多彩なプログラムを行う予定です。 

■ 展覧会図録 
気鋭の批評家、勝俣涼、中尾拓哉両氏による寄稿や重要なテキストの再録、展示構成の解説に加え、インスタレーションビューを収めた図録を発行します(書肆九十九より2024年2月初頭刊行予定/デザイン小池俊起)。 また、ほぼ全作品を収録した作品集も同出版社より発行が予定さ れています。

■ 作家プロフィール 豊嶋康子(とよしま・やすこ) 

1967年埼玉県生まれ。同地在住。1993年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修士課程修了。1990年田村画廊にて初個展。その後、秋山画廊(東京)、M画廊(足利市)、ガレリアフィナルテ(名古屋)、Maki Fine Arts(東京)などで継続的に個展を開催。
近年の個展に、「公開制作27 豊嶋康子『色調補正』」(2005年 府中市美術館)、「資本空間 スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸vol1」(2015年 ギャラリーαM)ほか。グループ展に「ART TODAY 1990」(1990年 高輪美術館)、「傾く小屋」(2002年 東京都現代美術館)、「第9回 恵比寿映像祭 マルチプルな未来」(2017年 東京都写真美術館)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2017」(2017年 旧・名古屋税関港寮)、「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(2019年 国立新美術館)ほか多数。東京造形大学教授。

撮影:栗原論

■ 同時期開催展 

企画展「MOTアニュアル2023  シナジー、創造と生成のあいだ」(12月2日-2024年3月3日) コレクション展「MOT コレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020/特集展示 横尾忠則―水のように/生誕100年 サム・フランシス」(12月2日‐2024年3月10日)  

■ POPAP編集部より 

既成の仕組みや枠組み、順列などに対して、脈絡を守りつつも「私」を用いて別の見方を挿入し、 本来の見方を反転させることで、表と裏のように二面性を表現しています。「考えさせられる」作品であると同時に「見て」楽しい展示になっています。人の数だけ見方や解釈が変わる個展です。ぜひ東京都現代美術館に足を運んでみてはいかがでしょう。

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