イベントレポート hello, popup vol.04『 TSUGU(継ぐ) 』
hello, popup vol.04 は 「TSUGU(継ぐ)」をテーマにファッションブランドCREATE CLAIR (クリエイト・クレイル) 安藤さん(@createclair)、フォトグラファー石本一人旅さん(@lonesome_ishimoto)と一緒に展示を行いました。
作品に宿るストーリーや温かみを大切にするおふたり。そのストーリーを閉じ込めて残す、ひとの手に引き継ぐというテーマに沿って、当日はお洋服を作るときに使った布の残りとドライフラワー、撮りためた作品を真空パックに詰めて手元に残す体験ができるブースをご用意しました。
■CREATE CLAIR・安藤弥生さんにインタビュー
ー今回の展示に参加いただいたきっかけを教えてください
もともとPOPAPの内田さんと何かやりたいねってお話をしていました。そのなかで、私がいつもご一緒しているフォトグラファーさんがいるので一緒にやるのはどうか、と企画が動き始めました。
─ 石本さんとはどういうつながりなんですか
ファーストシーズンのコレクションからルックの撮影をしてもらっていたんですが、1年くらい前からぐっと仲良くなって、作品撮りもやっていこうよというお話になりました。そうしてお洋服と一緒に撮ってきた作品が増えてきたので、一緒に展示したいねという話は以前からしていました。
ーブランドのコンセプト「日々の生活に輝きを創造する」はどういった想いからできたんでしょうか
お洋服ってすごく力があると思ってて。プレゼンの日には戦闘服としてこれを着て行こうとか、今日は家でリラックスしたいからラフなワンピースにしようとか、自分を表現したり、演出してくれる道具だと考えています。その感覚もひとによって違うので、着るひとそれぞれがお洋服で輝ける日を作りたいという思いで作品を作っています。
ー展示されているお洋服は、見た目だけではわからない部分にもこだわりが入っているんですね
そうなんです。なので私が作るお洋服には、アバンギャルドな形のものはほとんどないんです。形は普通だけど、生地にこだわっていたり、ちょっと袖が広いとか、背中にスモッキングが入ってるとか。日常に落とし込みやすいものをイメージしています。
ーCREATE CLAIRさんのお洋服は、スモッキングという技法が特徴的ですね
学生の頃にお洋服をコンテストに出していく中で、スモッキングに出会いました。色んな形があって面白いなと思って調べていくと、ヨーロッパの伝統技法であることを知って。分析・研究していくうちに見た目だけでなくて、機能面でも取り入れるメリットがあるんじゃないかと自分なりに解釈しました。例えば、肩に入っているということは伸縮性があるんだろうとか。それを私らしく作品に落とし込みたいなと思うようになりました。
ー安藤さんがデザインをして、実際に作るのは職人さんにお願いしているんでしょうか
そうですね。もちろんサンプルは作るんですけど、製品を作るところはプロの方にお願いしています。生地を作る人、加工する人、それを洋服にする人、色んな人の手が加わって出来あがっています。あえて時間や手間をかけることで、製品に愛やストーリーが込められると思っていて、そういったものづくりを大事にしています。
ー素材のこだわりについても教えてもらえますか
オリジナルの素材を使うようにしています。工場でどの機械からどんな生地が生まれているのかを見ながら、職人さんと話しているときのひらめきから、オリジナルの生地に行き着くこともあります。例えばこれは、ダブルジャガードといって表と裏と2種類の生地を作れるから、渡している糸を切ることでフリンジにしたらどうかなと。ラメの糸もどれくらいの光が欲しいかまでこだわって取り寄せたりしています。
ーお洋服を買ってくれるのはどんな人が多いですか
20代から40、50代の方まで、年齢は結構幅広いですね。当初は30代をターゲットにしていたんですが、それよりも上の年齢の方ががディテールまで見たうえでこだわりを理解して買っていかれることも多いんですよ。生地の作り込みやスモッキングを見て、「これ他では見たことない、オリジナルだね」「素材がいいね、とてもよくわかるよ」って言ってもらえるのはすごく嬉しいです。
ー今回、体験から展示企画を作ってみてどうでしたか
年に2、3回百貨店に出展することはあるんですが、企画をしたのは今回が初めてです。自分自身のものづくりと同じように、ストーリーと紐づけて意味を持たせるような展示ができたことはとてもいいなと思いました。1日でやっちゃうのはもったいないくらいに楽しかったです。
■フォトグラファー・石本一人旅さんにインタビュー
ー石本一人旅、って印象的なお名前ですね
写真を始める前に本名で全然違う仕事をしていたので、本名で検索すると過去の仕事がでてきちゃうんです。それで写真家としての名前が必要だなと思い、 旅が好きであること、当時私生活でも離別があってこれからひとりだなということから「一人旅」としました。
ー写真を撮り始めてどれくらいですか
もう10年くらいになります。ふと友達が持っていたカメラを触らせてもらって、その時に「これだ!」と思いましたね。 今までで一番続いている趣味ですね。
ー今回の企画、「TSUGU」の中で石本さんのアイディアはどんなところに反映されていますか
真空パックですね。CREATE CLAIRの手作りすることや、布へのこだわりを真空パックに詰めて「想いとストーリーを半永久的に閉じ込めて手元に残す」のはどうかと思いついて、それいいねとなって体験ブースができました。
ー石本さんの作品を見ると、ざらっとしたフィルムのような質感が特徴的だと思うのですが、どういったこだわりで撮影していますか
今の時代で写真を語るとすると、デジタルカメラになるんですよね。 並行して、ファッションフォトを中心にフィルムのリバイバルが進んでいるという状況もあります。 昔ながらの温かみのあるものを人が欲してるんだろうなというのは感じています。
ファッション関係の仕事が多いなかで、フィルムのような写真が欲しいけれど、その場でどんな写真が撮れているのかを見たいという要望があって。どうしたらこのニーズを満たせるのか考えた結果、デジタルでフィルムをやればいいんだということにたどり着きました。そこからデジタルで撮っているのにフィルム写真にしか見えない手法で撮影しています。
ーお仕事ではなく、石本さんの作品として撮るときはどんなことにこだわっていますか
僕は、ちゃんと撮ることが嫌いなんですよ。全てにピントが合っていて、輪郭がはっきりした綺麗な写真は撮りたくないんです。
作品を撮るときのテーマは、「揺らぎ」ですね。日々、万物は揺らいでいると思っています。ひとの気持ちも自然も1日経てば変わりますよね。そういう揺らぎを撮りたいんです。顔がぼやけた写真を撮ると、その人じゃなくなって、もっと抽象的なイメージに近づく。揺らぎを撮ることで、空白や想像の余地を作りたいと思っています。
ーCREATE CLAIRさんと作品を撮るときはどんなこだわりで撮ってますか
自分の意思を入れて撮るというよりは、安藤さんの意図を汲み取って撮ることが多いですね。CREATE CLAIRというブランドが大事にしている温かみを表現できるように撮っています。もう3年以上撮っているので、細かい確認をしなくても撮りたいイメージがわかるようになりました。
ー安藤さんと石本さん、作品づくりにおいて大切にしているものが近いように感じました。
そうですね。それは本当にたまたまなんですが、想いが近いからこそ、無理に歩み寄らなくても一緒にやっていけてるように感じています。力が入っていなくていい関係性だなと思います。
ー今回のような企画に参加してみてどうでしたか
めちゃくちゃ面白いですね。こういうのがやりたかったです。ひとりじゃわからないことってたくさんあるので。誰かと頭をひねって一緒に作ることでいいものが出来上がる、非常にクリエイティブな体験になりました。
ーまた共同展示の機会があるとしたら、どんなブランドさんと一緒にやってみたいですか
サステナブルというテーマに非常に興味があって、自然の摂理というのをとても大切にしています。オーガニックなブランドさんとご一緒できる機会があれば、すごくハマるんじゃないかなと思いますね。
ー今後、ブランドとしてどんな風に変わっていきたいですか
アンティークのフィルムカメラで撮ることはできるんですが、過去のものをそのまま使っているだけで「今」ではないんですよね。2020年の写真ではない。2020年の今だからこそできる手法があるはずなんです。そうやって自分にしかできないようなやり方で、時代の影響を大いに受けて、翻弄されながらやっていきたいですね。
【参加クリエイター(順不同)】
CREATE CLAIR・安藤 弥生
公式HP:http://createclair.com/#
Instagram:https://www.instagram.com/createclair/
フォトグラファー・石本一人旅
公式HP:https://www.lonesomeishimoto.com/
Instagram:https://www.instagram.com/lonesome_ishimoto/
【開催場所】
OPEN NAKAMEGURO
Instagram:@open_nakameguro
〒153-0051
東京都目黒区上目黒2-9-17
Nakameguro Crossover1F
NOVEMBER 15, 2020